レッドマスク

水野重康


レッドマスク」はほとんど忘れ去られた様な感がありますが、この作品は紛れも無く「横山光輝」の代表作の一つであり、唯一の「超人ヒーロー物」です。
そして、この作品を契機に「横山光輝」は「宇宙SF物」へと歩を進めることになる「エポック的」な作品でもあります。


レッドマスク とは何か?
これが第一回目の言葉でした。


レッドマスク」は、本名を「秋庭五郎」と言い、中学生ですがアメリカン・コミックの「スーパーマン」と同じ能力を有する「超人」です。
それもそのはず、「レッドマスク」こと「秋庭五郎」の父親は、惑星クリプトン滅亡の日に脱出した数人の子供の内の一人なのです
(その内の一人がアメリカの「スーパーマン」である・・と言う設定)。


「秋庭五郎」の父親は成長した後、日本人女性と結婚して生まれたのが、本編の主人公「秋庭五郎」です。
但し、地球人との混血の為、「アキレスの踵」と言う大変な弱点を持っているのですが、その様な事はお構いなしに「超人レッドマスク」として、世の中の悪と戦う・・と言うストーリーです。


そして、本当の窮地に陥ると、父親の「大超人」が出て来て助けてくれるのですが、この父親がなんと「敷島博士」と同じ顔になっています。
この辺りは何となく「鉄人28号」とダブりますね。


処で、先程来「秋庭五郎」の名を盛んに出していますが、へへへ・・。
誰も知らない話ですが、この名前は「パクリ」なのです。


「秋庭五郎」は「島田一男」創作の「名探偵・香月俊太郎」の助手をしている「少年探偵の名前」なのです。
昔、光文社から「少年探偵全集」と言うのが出ていました。
「江戸川乱歩」の「怪人二十面相」シリーズとは別の企画で、時の光文社はこの様なシリーズも出していたのです。


この全集の中に「怪人緑ぐも」と言うのが有りまして、この中に登場するのが「名探偵・香月俊太郎」とその助手である「少年探偵・秋葉五郎」なのです。
「横山光輝」はこの「キャラクター」には特別なそして相当な「思い入れ」があったらしくて、「金田正太郎」の様に、一回、これっきりの「キャラクター」になっています。
光文社版「鉄人28号」の裏表紙に色々な「キャラクター」が描かれていますが、「中学生カバン」を肩からぶら下げた、髪の長い少年が描かれている「カット」が有ります。
これが「秋庭五郎」です。
「秋庭五郎」の「イメージ」は後に「バビル二世」へと引き継がれて行きます。


もう一つ有名では有りませんが、「横山光輝」を考察するうえで欠かせないのが「おもしろブック」に連載されていた「レッドマスク」なのです。

私は「レッドマスク」は好きでしたね。
「横山光輝」の作品群の中では「単に好きな作品」と言うならば、これが第一位ですね。
正義の超人たる主人公が「月光仮面」や「七色仮面」の様な「おじさん」ではなくて「少年」である・・と言う処が好きでした
(あの当時、このパターンは結構はやっていましたよね)


この作品は、本来ならばもう少し評価されても良いハズなのに意外なほど「知る人ゾ知る」の部類になっています。
早く世に出すぎた作品なのかもしれません。


2004年7月

レッドマスク」の画像はこちらです。

(※本文中の敬称は略させていただきました)

著者紹介水野重康
49年、静岡県掛川市で100年以上続く医者の家に生まれる。
54年、『ゴジラ』を観て以後、映画にのめり込み、SFを中心として5000本近くの映画を観る事になる。
趣味を通じて、五味康祐氏、田山力哉氏、その他に師事する。
83年、生地に歯科医院を開業して現在に至る。

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